サーフィ・アーンに狂う月
第四十八話

 情熱の余韻が、甘く肌に纏わりつく。アリスティアはそれを噛みしめながら、自身の胸に顔を埋めて眠る青年の頭を強く抱きしめる。久しぶりに受けた彼の愛撫は、記憶の中に在るものよりも鮮烈で激しかった。

 階段を隔てて視線が交わされた瞬間、甘美な痺れを覚えたのは、アリスティアだけではないだろう。彼も――カイも、同じだったはずだ。差し伸べられた腕に縋るように、アリスティアは階段を駆け上り、カイは彼女が最後の一段に足をかけるよりも早く、その身体を抱き寄せた。それからごく自然に二人は手近なこの部屋に入って鍵をかけ、互いの熱を貪り合ったのだ。
 渇き切っていた喉に水が与えられた、それに等しい充足感。前戯は殆どなかったはずなのに、アリスティアは簡単に彼を受け入れた。

 ――淫乱(スキモノ)

 耳元に囁かれた言葉に貌を赤らめたが、それ以上に身体が熱く燃え上がった。最奥を突かれるたびに媚声を漏らし、細く引き締まった彼の背に爪を立てる。餓えていたせいか、一度目の絶頂は思いのほか早く訪れ、ようやっと一息ついたと思う間もなく今度は濃厚な口唇愛撫に翻弄された。
「カイ」
 名を呼ぶ声に吐息が絡まる。都度、彼はアリスティアの唇を奪った。時には激しく、時には啄ばみの如く微かに。その全ての口付けに、彼女は情熱を以て応えた。
 長い愛撫を経て二度目に迎えた絶頂のあと、カイは満足げに唇を重ね、彼女から己を解放する。そうして、

 ――寝る。

 呟きと同時にアリスティアの双丘の狭間に顔を埋め、寝息を立て始めた。
 重い、と。どかそうとしたが、
「……」
 思い止まる。柔らかな金褐色の髪に指を絡め、それを優しく梳いた。愛情でも恋慕でもない、ただ、奇妙な感情が奥底から溢れだしてくる。身体を繋げている間は、彼は自分のものだという優越感なのかもしれない。自分の身体が、彼を虜にしている。自分が覚える快楽以上に、彼は強い歓びを覚えている。それは、直感だった。恐らく他のどの女性も、自分ほど彼を満足させることはできないのではないか、そう自惚れてもよいかもしれない。
 離れていた間、彼はどれだけの異性と関係を持ったのか。だとしても彼女らの誰一人として、アリスティアを越える者は存在しなかったのだ。思うと自然、笑みが零れる。
 アリスティアとて、ただ欲望に任せて彼に身体を許しているわけではない。交わりのたびに、彼の身体を知る努力をしている。どうすれば彼が悦ぶのか。感じるのか。探ることを忘れない。我を忘れて行為に没頭することはない――と思いたいが、最終的には彼の唇に、指先に、掌に、翻弄されているような気がする。
 尤も彼を呪縛するためには、アリスティアに対する恋情を抱かせなければならないのだが。流石にそれは無理だと諦める。彼は自分と似ているのだ。男女の情たるものを、持ち合わせてはいない。


「伯爵は、どうした?」
 目覚めた彼の、第一声がそれだった。
 無論、「会いたかった」「愛している」等という陳腐な言葉を期待していたわけではない。それでも、一抹の寂しさは拭えなかった。アリスティアは「さあ」とだけ答える。自分がどうやって屋敷を出てきたか、また、何故セルニダにいるのか。その説明はしない。する気はない。また、彼も訊く気はないだろう。彼女がここにいるということは、伯爵の身に何か異変が起こったということだ。セルニダに在って、新国王や女王の即位を目の当たりにしていた彼ならば、その辺りの事情も察しているはず。現に、彼はそれ以上の問いかけはしなかった。
 が。
「娼婦をしてたのか?」
 思わぬことを尋ねられ、呆気にとられる。
「用心棒として雇われた。この恰好を見れば判るだろう」
 床に散らばる男性用の短衣と洋袴を目で示すと、彼はくつくつと喉の奥で笑いだした。
「何が可笑しい?」
「いや。随分と、上手くなったからさ」
 それが男女の営みのことだと気付き、アリスティアは赤面した。
「前はもっと、ぎこちなかった」
 それが彼の素直な感想だった。手練手管に長けた娼婦を相手にしている彼にしてみれば、アリスティアの愛撫など人形相手のそれに等しい。女性としての本能で応えてはいるが、所詮は素人、しかも王族の姫君である。どれほどの美質を備えていたとしても、それまでだった。
 ただ、娼婦と違って打算的な媚びを含んだ反応を示さぬところが新鮮だ、と彼は言う。
「娼婦と比べているのか?」
「誰と比べろっていうんだ?」
 カイの言葉に詰まる。自分の他に特定の情婦が居る、とは思いたくない。考えてからアリスティアは軽く唇を噛んだ。これではまるで、嫉妬しているようではないか。
 カイはゆるりと身を起こし、彼女の上に圧し掛かる形でその顔を見下ろしていた。灯りを落としているので、その表情は見えない。だが、冴え冴えとした金褐色の双眸が、此方を凝視しているのが判る。いま彼の瞳には、アリスティアが映り込んでいるのだろうか。それほどに、近い。
 カイ、と呼びかけようとしてやめた。それより先に彼が口を切ったからだ。
「伯爵に、抱かれたのか?」
 投げられた問いに、かぶりを振った。
「他の男には?」
 続けてかぶりを振る。
 このような営みを、そうそう誰とでもするわけではない。行為に慣れてきた、それだけで彼は他の異性との交渉を疑うのか、と。アリスティアは眉を寄せた。カイに操を立てているわけではない、が、身持ちが悪い娘と思われるのは心外だった。彼の腕の中で大胆に快楽に溺れる様を見せるのがいけないのだろうか――高貴なる姫君らしく、恥じらいと慎みを以て控えねばならぬのか。
 敷布を掴む手に、力が籠る。アリスティアは薄闇越しにカイを睨みつけた。
「寝るのは、俺とだけにしろ」
 首筋に、口付けが落とされる。どういう意味だと尋ねる前に胸を揉みしだかれ、アリスティアは掠れた声を上げた。胸部からじわりと湧きあがる快感に、微かに身じろぎする。十二分に解されている身体が、みたびの絶頂を求めて妖しく蠢き始めた。感じやすい胸の尖端を執拗に弄られ、彼女は駄々っ子のように身悶える。彼は彼女の背に腕を回し、ゆっくりとその身体を寝台から浮かせた。背骨の脇を指先で強く擦りあげると同時に、乳房を唇に含みその尖端を舌先で転がす。これだけで、アリスティアの身体は小刻みに震えた。様々な方向から与えられる快楽に、理性が蕩けていく。望んでいない、甘い媚声が止め処なく唇から零れる。
「この声も。ひとに聞かせるな」
 そんなことを、彼が言ったかもしれない。ただ、続けて
「アリッサ」
 呼ばれた名のほうが、強く彼女の心を揺さぶった。
「あ……」
 快楽とは異なる、別の感覚が胸の奥で弾ける。アリスティアは彼の首に腕を絡め、強く抱きしめた。
 カイ、と。上ずった声で名を呼ぶが、彼は寂しげな微笑を返すだけだった。


 思う様アリスティアの身体を堪能した彼は、
「また来る」
 そう言って、髪に口付けた。
 この翡翠館がセルニダにおいての彼の定宿となっているのか、それとも別に拠点があってそこで普段は過ごしているのか。どちらにせよ、この娼婦館はファーヴィアンの息がかかっている。彼が出入りしていることに違和感はないが、
「――ここに長居をする気はない」
 敵中と知って、長く留まることはできない。アリスティアは彼の手を解き、身を起こす。男子を装い続ける限り、また、セシルがアリスティアの素性を明かさぬ限り、ここに潜伏することは可能だと思う。しかし、それも長い期間ではない。あの抜け目のないレオンなる男、女将の片腕とも言えるかのひとが自身の正体に気付くのは時間の問題であろう。無論、セシルが言葉通りアリスティアの味方となってくれている間は、レオンも表立って動くことはできぬだろうが。
 カイも事情を察したらしい。衣装を纏い始めたアリスティアを背後から抱きしめ、
「正体がばれたら、本当に娼婦にされるかもしれないな」
 恐ろしいことを言う。
「サーフィ・アーンの血を引く亡国の王女。それもとびきりの美形とくれば、かなりのウリになるだろう。抱きたいと思う輩もごまんといるだろうしな」
 続く言葉にぞっとした。国を奪われ、両親も地位も名も奪われたうえに、そのような辱めを受けるなど。考えるだけで吐き気がする。身を固くしたアリスティアを更に強く抱きしめ、カイは頬を寄せてきた。
「心配するな。俺がずっと指名し続けてやるから」
 甘い囁きに、心が震えた。
「ばか」
 朱の散った顔を見られぬよう、そっぽを向く。からかわれているのだと判っても、軽い苛立ちと共に嬉しさが湧きあがる。
「助ける、くらい言ったらどうだ? ――だれにも渡さない、とか」
 憎まれ口を叩いたつもりが、どう考えても好意を伝えているようにしか思えない。うっかり口を突いて出た言葉に、アリスティアは更に赤面した。今の言葉はなかったことにしてほしい、いや、なかったことにして流せ、と。心の中でカイに訴える。彼のことだ、アリスティアを【落とした】と内心ほくそ笑んでいることだろう。女の弱い部分を巧みについて、その心を弄ぶ術に長けている遊び人、そんな輩に気を許した、好意を持った、と思われるのは心外だった。
 黙っていられると、余計苛立ちが募る。
「カイ?」
 何とか言ったらどうだ、と呼びかけてみるが、返事はなく。代わりに、彼の腕に力が籠められた。
「カイ?」
 不審に思い、肩越しに彼を振り返る。薄闇に冴える金褐色の瞳、それを捉えたと思う間もなく、彼は唇を重ねてきた。



「レティシア様も、惨いことを為されますな」
 カミーユの最期を人づてに聞かされたレオンは、嘆息した。カミーユは運が悪かった、と言ってしまえばそれまでだ。彼女は、レティシアの顔を知っていた。その正体は知らぬまでも、レティシアの存在を知り、彼女を「姐さま」と慕っていた。そもそも、カミーユをこの娼婦館に連れてきたのはレティシアだったのだ。異国の旅芸人一座に在ったカミーユの占いを気に入り、彼女の器量と人あしらいの上手さに目を付けた。ファーヴィアンとは全く関わりのない娘を人気娼婦とすれば、他の間諜たちの目くらましにもなる。
 翡翠館に抱えられている娼婦は、全部で二十人ほどいるが、うち半数がファーヴィアンの間者であり、下級貴族の令嬢か、庶子であった。だからこそ、高級娼婦といった印象を強く出せるのだと嘗て女将も笑っていた覚えがある。件の女将ソニアも、元はリ=ファーンの娼婦館に籍を置いており、先代リ=ファーン侯爵の愛妾のひとりであった。
「レティシアの無体は、今に始まったわけではないわ」
 レオンの注ぐ葡萄酒の芳醇な香りを楽しみながら、セシルもまた息を吐く。あの愚かな姉は、感情に任せてまた下らぬ問題を起こした。カミーユのことも、殺すほどのことでもない。口止めをしておけばよかったはずだ。もしくは、あまり頭の回らぬカミーユである、他人の空似で済ませておけばよいものを。
「セシル様をご覧になられても、『レティシア姐様?』と呼ばれましたからね、カミーユ様は」
 今度は苦笑を交えるレオン。レティシアとセシルでは、年齢が十歳近く違う。享楽的な生活を送っているせいか、見ようによってはレティシアも五、六歳は若く見えることもあるのだが。
「今まで全くと言っていいほど、此方にお運びになられることはありませんでしたからね、セシル姫は。だからまあ、わたくしも吃驚しましたよ。本国からも、レティシア姫からもまるで何も伺っていませんでしたし」
 下座に座る翡翠館の女主人・ソニアも、苦い笑いを隠さない。それに対して、ごめんなさいねと形式的な詫びを入れたセシルは、ちらりと足元に目を向ける。その部屋は、アヤルカス王女アリスティアに与えられた部屋だった。セシルの素性を知った彼女は、今頃逃走の準備をしているのだろうか。味方だ、との言葉を鵜呑みにするほど愚かではない、けれども、襲撃を恐れて逃亡するほど臆病でもない件の王女は、寧ろセシルの正体を知って闘争心を滾らせたのではあるまいか。
 敵の中に身を置き、状況を逆手にとってファーヴィアンの情報を入手する、そのようなことも考えているかもしれない。それくらい気丈な姫君だ。
 このまま、泳がせておけばいい。いつか必ず、アリスティアはアヤルカスの残党と接触する。
 ふ、とセシルが笑みを溢せば、
「何か?」
 ソニアは首を傾げた。
「いえ。アヤルカスの王女、あのひとも面白いと思って。なかなか、楽しませてくれそうね、アリスティアは」
「姫様」
 ソニアの表情が曇る。
「アリスティア王女のことは、レティシア様には」
「言わないでちょうだい。勿論」
 セシルは間髪を入れずに答えた。何のために、アリスティアのことを男子と偽っているのか――それはレティシアに知られぬためだ。アリスティアの存命を知れば、レティシアは間違いなく殺意を抱く。彼女にとってサーフィ・アーンの正統なる後継者は邪魔なだけである。ファーヴィアンを継いだルクレティアすらも、出来れば殺害しようとするだろう。否、実際に刺客を送っていたはずだ。彼女に対して。
 アリスティア、及びセシルの素性を知っている者は、ソニアとレオンのみである。娼婦たちも見目麗しいアリスティア――アリスティドの存在に色めき立っていたが、セシルと恋仲であるという触れ込み以上に男色家との噂が広まりつつある今は、皆以前ほどの興味は失っている模様だった。いっそのことレオンを彼女の恋人に仕立ててみるかと考えたが、
「御免蒙ります」
 レオンが拒んだのと、幾ら芝居とはいえアリスティアがこのような茶番に協力するとは思えぬため、やめたのだ。

「そういえば、遅うございますわね」

 話の切れ目に、ソニアが遠慮がちに周囲を窺う素振りを見せる。気付いたレオンが、左様でございますねと女将の傍を離れ、
「確認してまいりましょう」
 静かに退室した。
「誰か来るの? まさか、レティシア?」
 眉を顰めるセシルに、
「違います、姫様。今宵は此方に、国王陛下が見えるとの報せがありましたゆえ」
 半ば苦笑に近い笑みを溢しながら女将が説明する。
 国王。その言葉に、セシルは更に苦い顔をした。レティシアと共に王位に就いた男、ジュリアス一世。彼がここを訪れる理由は、ただ一つ。セシルと対面するために他ならない。後継の証である遺産、紫の瞳を持たぬジュリアスは、遺産を引き継いだ女性を妻に迎えることにより、初めてサーフィ・アーンの帝位を継承する権利を得ることになる。つまり、レティシアもしくはセシルとの婚姻を以て、彼は皇帝たる権利を有するのだ。
「くだらない」
 そんな権力欲に溺れた男の妻になど、なる気はない。そもそも姉が傍にいるのだ、姉を妻としてしまえばよいではないか。単純に考えれば、それが一番の近道なのだが、それではレティシアの気が済まないらしい。
「花嫁候補は数人は必要だ、と仰っていらっしゃいました」
 ソニアも嘆息する。彼女もレティシアの性格は、知りすぎるほど知っている人物の一人だ。
 レティシアは、常に自分と他者を比較する。比較して、優劣を決めねば我慢ならない。今回も、セシルと花嫁の座を争い、結果、自身が選ばれた、と。そう思いたいのだろう。単純な女である。それでよく、国を治めようと思うものだ。
「一年ともたずに崩壊してしまうわね、新生アヤルカスも」
 偽らざる本音である。ソニアは頷きはしなかったが、無言で葡萄酒に口を付けた。何とも言い難い、複雑な目をしている。彼女のこういう流し方の上手い部分を、父は気に入っていたのだろうと思う。レティシアの母に対する寵愛が薄れたあと、傍に置いておいたのがこのソニアだ。とある男爵の庶子だったというソニアは、美貌もさることながら気風も良かった。切れ者と名高いリ=ファーン侯爵の寵愛を受けるには、相応の器量や気品も必要である。ソニアはその全ての要求に応えうる女性だった。
「カミーユと共に観劇に出向いた娘、あの子は衝撃で寝込んでしまったようね。本当に、レティシアは酷いことをするものだわ」
 ソニアから目を逸らし、セシルは嘆息する。
「件の娘は、故郷に帰しますわ。見舞金として借金を棒引きにして、当面の生活資金を与えて」
「あら? 彼女は【違う】の?」
「はい。女衒より買い取った、アヤルカスの農民の娘です。先の戦で、農園を全て失ったということで」
 ソニアの答えに、セシルの表情が翳る。
 戦の前までは、裕福な暮らしをしていたに違いない。それを考えると、哀れだった。それ以上に、故郷に返されてもまた何処か別の娼婦館に売り渡される、そのことを考えるといたたまれなくなる。
 室内に重苦しい沈黙が横たわるなか、遠慮がちに扉が叩かれた。
「失礼致します」
 レオンである。入室を許された彼は、気まずそうにセシルを、次にソニアを見た。何かありましたか、そう尋ねるソニアに対して
「はあ」
 彼らしくない、歯切れの悪さで答えたのは。
「国王陛下がお見えになられてはいらっしゃるのですが、その、気に入りの娼婦を見つけたとのことで、お部屋に籠っていらっしゃるのです」
 セシルはソニアと顔を見合わせた。
 国王たるジュリアス一世、先のファーヴィアン国王フォルトナート一世の落胤にして、市井育ちだと聞いてはいたが。花嫁候補との対面を前にして、娼婦に走るとは。とんだだらしのない男だ。
 そもそも、彼がレティシアと出会ったのも、娼婦を求めてこの館を訪れたからだという。それ以前より、王女アリスティアを名乗る少女を殺害するためにセルニダに滞在していた彼は、頻繁にあちらこちらの娼婦館に出入りをしていた。それは、娼婦を通じて情報を得ることよりも、肉体的な愉しみを求めてのことだと思えてしまう。
「似た者同士ではなくて、レティシアと」
 呆れ顔のセシルに、ソニアは困惑の表情を向ける。その、ジュリアス一世に気に入られたという娼婦、それはいったい誰なのだとソニアはレオンを問い質す。
「ミカエラかしら? それとも、ロロット?」
 人気娼婦の名を上げるが、レオンはどれに対してもかぶりを振った。そもそも、指名の多い人気娼婦は予約待ち状態で、ふらりと訪れた男に捕まるほどの余裕はない。では、先頃店に出たばかりの新人かと思いきや、それも違うという。レオンは平素の彼らしくなく、幾許かの動揺を表に出しながら、その【娼婦】の名を告げた。

「アリスティア王女殿下、です」
 

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